友禅染め
 言葉は聞いたことがあるけれど、どんなものかはよく知らない⋯
という人が、圧倒的に多いのではないでしょうか。
 成人式に振り袖を着たことがある人は、聞いたことがあるかもしれませんね。
そうです、あの豪華な振袖や綺麗な着物の模様を描く技法のひとつが、友禅なのです。
このページで、少しだけ友禅のことをご紹介してみますね。

◼︎名前の由来◼︎

友禅という名の由来は、江戸時代に京都に実在した宮崎友禅斎というお坊さんから来ています。
友禅斎さんは絵の得意な僧侶であったそうです。
当時は着物に絵を描く技術がなく、どこかの大金持ちのお嬢様が襖絵(今の日本画ですね)を見て「こんな絵を着物に描いて欲しい」と友禅斎に依頼したのが友禅染めの始まりだったと聞いたことがあります。

◼︎友禅の技法とは◼︎

襖絵を着物に描くために、友禅斎は試行錯誤の末に「糸目友禅」を考えだしたのでしょう。糸目とは、米糠を蒸して糊状にしたもののこと。
これを筒に入れ、細く絞り出して絵の輪郭を線で描きます
(ちょうど、パティシエがチョコレートで字を書くみたいな感じです)。
その後で染料を筆で塗るのですが、その時この糸目が防波堤の役割となって、染料が外へ滲むのを防ぎます。
そして最後に水洗いをした時、この糸目糊で描いた線は染料が染まらず、
白い生地のままの線となって現れます。
この糸目糊の白い線が輪郭に表われる技法が『糸目友禅』です。

◼︎友禅の種類◼︎

友禅染めは一躍当時最先端のお洒落となり、それ以降、糸目友禅以外にも様々な技法が着物職人の手によって生まれました。
主には、糸目糊を使わず筆でだけで描く『無線友禅』や、色ごとに作った型紙(型枠)に染料を重ねて柄を染めていく『型友禅』という技法などです。特に、型友禅は糸目友禅に比べて格段に生産性が高いため、それまで一部の裕福な家の女性しか身にまとうことが出来なかったものが、庶民の晴れ着として広まることとなりました。
これが、現在の振袖や訪問着・留袖などの原型となっています。

◼︎現在の友禅◼︎

今現在流通している『友禅』と呼ばれるものは大きく手描き友禅と型友禅に分かれていて、手描き友禅は糸目や無線友禅などの昔ながらの技法で手作業で描かれ、型友禅はシルクスクリーンで擦って染められています。どちらも手作業に変わりはありませんが、前者の方が作家の1点ものとして扱われることが多いようです。

◼︎お金持ちが言う●●の由来◼︎

「金に糸目はつけない」という言葉、聞いたことありませんか?(私は言ったことはありませんが 笑)この糸目、実は友禅の糸目が由来という説があります。先ほど技法の説明で『糸目糊が染料の防波堤になる』とお話ししました。染料は水なので、布に描こうとすると滲んで、絵の外まで色が滲み出してしまいます。それを防ぐために、糸目糊が滲み止めの役割となっている訳です。そのためお金を際限なく使うことを、糸目糊のないまま絵を描くことに例えて「金に糸目をつけない」となったそうです(諸説あります)。言われてみたいものですね。

◼︎川で洗う『友禅流し』とは◼︎

川で反物を洗う『友禅流し』という作業が見られました。
これは、染め上がった反物に付いた糸目糊を洗い流す作業です。
糊は米糠が原料のため、落ちた糊は川に棲む魚の餌になります。
その魚を漁で人が食し、自然のサイクルの一部に友禅が役立っていたのですね。

◼︎友禅は日本にしかない技術◼︎

世界中どこにでも布を染める技術や技法はあります。
そして、細かいところは違っても技法の種類や使う材料に世界で共通することが多いです。
ですがこの友禅だけは、日本ならではのものなのです。なぜなら、米糠の糊を使う技法は、米を主食とする日本でなければ生まれなかったからです。
東南アジアなどの熱い国には糸目友禅に似た技法がありますが、材料は蝋が多く使われています。けれど、蝋では糊のように繊細な線を描くことができません。
友禅の繊細な絵は、稲作文化の日本人だからこそ生まれた芸術なのですね。

友禅についてご理解頂けたら嬉しいです
equboの作品をぜひご覧くださいね